停電したときに困らないための備え【防災士が考える】

台風や大雨、地震などの災害が発生すると、電線や電柱などの被害によって停電が起こることがあります。停電すると、照明が使えなくなるだけではありません。スマートフォンの充電、冷蔵庫、エアコン、トイレ、給湯器など、普段何気なく使っているものが使えなくなる可能性があります。

「もし今、停電したら、自宅では何が使えなくなるだろう?」

そう考えてみることが、停電への備えの第一歩です。

今回は、防災士でもある当社代表の視点から、停電したときに困らないために、普段から準備・確認しておきたいポイントをご紹介します。

1.まずは「停電に備えるもの」を準備

停電への備えとして、まず用意しておきたいのが、電気がなくても生活を続けるための防災用品です。

モバイルバッテリー・ポータブル電源

災害時、スマートフォンは家族との連絡だけでなく、停電情報や避難情報などを確認するためにも重要な道具になります。しかし、停電するとコンセントから充電できなくなるため、モバイルバッテリーやポータブル電源を備えておくと安心です。

スマートフォンの充電が主な用途なら、10,000mAh~20,000mAh程度のモバイルバッテリーが一つの目安になります。家族分の充電や、扇風機などのUSB機器にも使いたい場合は、容量や出力を確認して選びましょう。

より多くの電力を確保したい場合は、ポータブル電源も選択肢になります。ポータブル電源を選ぶときは、「W(ワット)」と「Wh(ワットアワー)」の両方を確認することがポイントです。「W」は一度にどれくらいの電力を出せるか、「Wh」はどれくらいの電力量を蓄えられるかを表します。電気毛布など、使用したい機器の消費電力を確認し、それに対応できるものを選びましょう。

そして、こうした電源は「買ってしまっておく」だけではなく、普段から使っておくことも大切です。

スマートフォンやライト、扇風機などの充電に活用し、定期的に残量を確認。使ったら充電する習慣をつけておけば、いざというときにも安心して使えます。

「備える → 使う → 充電する」

このサイクルを日常に取り入れることも、停電への備えの一つです。

停電したとき、情報をどうやって得る?

災害時には、停電の状況や復旧の見込み、避難情報などを確認するために、正確な情報を得ることも大切です。停電するとテレビやWi-Fiが使えなくなる可能性があるため、

  • スマートフォンを情報収集の手段として確保
  • 自治体の防災情報を確認できるよう、あらかじめ防災アプリや自治体のウェブサイト

を確認しておきましょう。また、スマートフォンが使えない場合に備えて、乾電池で使えるラジオを用意しておくのも一つの方法です。

乾電池で使えるラジオ例

懐中電灯・充電式ライト・キャンドル

停電が夜間に起こると、家の中が突然真っ暗になります。懐中電灯や充電式ライト、ランタンなどを、すぐに取り出せる場所に用意しておきましょう。

特におすすめなのが、両手を自由に使えるヘッドライトです。暗い中で移動したり、作業したりするときにも役立ちます。

ヘッドライト付のヘルメット

また、普段使っている充電式のデスクライトやコードレスライトも、停電時の明かりとして活用できます。例えば、普段はコンセントにつないで使うタイプなら、いつでも充電された状態を保ちやすく、いざというときにもすぐ使えます。さらに、USB給電・充電に対応したライトなら、モバイルバッテリーにつないで使ったり、充電したりすることもできます。

充電対応のライトはいつでも充電された状態を保ちやすい

防災専用のライトを新たに用意するだけでなく、普段使っている照明を「停電したときにも使えるか」という視点で選んでみるのもおすすめです。

また、普段使っているアロマキャンドルなどのキャンドル類も、停電時には明かりとして活用できます。少し古くなって普段は使わなくなったものでも、状態に問題がなければ、非常時のために保管しておくのも一つの方法です。

ただし、キャンドルは火を使うため、使用する場合は周囲に燃えやすいものがないか確認し、その場を離れない・転倒させないなど、火災には十分注意しましょう。

夏の停電に備える

夏に停電すると、エアコンや扇風機が使えなくなり、室温が上昇する可能性があります。ハンディ扇風機やうちわ、保冷剤、飲料水など、電気を使わず暑さをしのぐためのものを準備しておきましょう。

  • ハンディ扇風機(USB給電もできる)
  • 冷凍庫に保冷剤・凍らせたペットボトルを普段から入れておく
  • うちわ
  • 飲料水の備蓄
  • 冷感タオル・冷却シート
  • 遮光カーテン・すだれ
    ※暑さによる体調不良に備え、必要に応じて経口補水液などを用意しておくのもおすすめです。

 

暑さ対策は「冷やす」だけでなく、「暑くしない」ことも大切です。 遮光カーテンやすだれなどで日差しを遮り、室温の上昇を抑える工夫もしておきましょう。

さらに、停電が長引いて室温が危険なほど上がった場合は、無理に自宅で過ごさず、エアコンの使える親族宅・避難所・公共施設などへの移動も検討しましょう。

冬の停電に備える

冬は暖房器具が使えなくなることを想定して、防寒対策をしておきましょう。

  • ホッカイロ
  • 毛布
  • 防寒着
  • 湯たんぽ(お湯タイプ・USB充電タイプ)
  • モバイルバッテリーで使用できる電気毛布・ひざかけ

「電気を使わずに暖をとれるもの」を基本に、モバイルバッテリーで使用できる暖房グッズなども用意しておくと安心です。また、普段から暖かい服を重ね着できるようにしておくなど、電気に頼りすぎない防寒方法を考えておくと安心です。

2.「これ、停電したら使える?」を想像する

停電への備えというと、防災グッズを用意することに目が向きがちですが、もう一つ大切なのが、「自宅の設備が停電したらどうなるか」を知っておくことです。

うちのトイレは停電しても使える?

「停電したら、このトイレはどうやって流すの?」

一度、おうちのトイレを確認してみましょう。

製品によっては停電時の操作方法が決められている場合があります。取扱説明書などで、停電時の使用方法を確認しておくと安心です。

また、災害時には断水が起こる可能性もあるため、携帯トイレや簡易トイレを備えておくことも大切です。スマートフォンや照明のことを心配しがちですが、「トイレが使えない」という状況も、生活するうえでは大きな問題になります。

冷蔵庫はできるだけ開けない

停電すると、「冷蔵庫の食品は大丈夫?」と気になりますよね。停電中は、冷蔵庫の扉をできるだけ開けないようにしましょう。

扉を開けるたびに冷気が逃げてしまうため、必要なものを取り出すとき以外は閉めておくことが大切です。また、冷凍庫に保冷剤や凍らせたペットボトルなどを入れておくと、停電時の保冷に活用できます。

停電が長時間続いた場合は、食品の状態を確認し、安全性に注意して判断しましょう。

給湯器や給水設備は停電するとどうなる?

停電すると、住宅によっては給湯器や給水設備が使えなくなり、お湯や水が使えなくなる場合がありますので、今一度自宅の設備を確認してみましょう。

また、災害による断水に備えて、生活用水として浴槽に水をためておく方法もあります。ただし、小さなお子さまがいるご家庭では、浴槽に水をためることによる転落事故にも注意しましょう。

オール電化住宅は特に確認を

オール電化住宅では、停電すると生活に必要な設備が一度に使えなくなる可能性があります。
例えば、

  • IHクッキングヒーター
  • 電気温水器・エコキュート
  • 電気式の暖房
  • 電気を使う調理家電

などです。

具体的に想像し、カセットコンロなど、電気を使わずに調理できるものを用意しておくのもおすすめです。

オートロック・電気錠・共用設備も確認

マンションや住宅によっては、自宅の出入りや建物の共用部分にも、電気を使った設備が設置されています。
例えば、

  • オートロック・電気錠
  • エレベーター
  • 共用廊下や階段の照明
  • インターホン
  • 宅配ボックス

などです。

停電したときにこれらが使えない場合のことを、あらかじめ確認しておきましょう。「自宅の中」だけでなく、「建物全体が停電したらどうなるか」という視点でも備えておきましょう。

3.ペットや水槽の生き物への備えも忘れずに

停電の影響を受けるのは、人間だけではありません。ペットや水槽で生き物を飼っている場合は、停電したときの生活環境をどう維持するかも考えておきましょう。

ペットへの備え

夏にエアコンが止まれば、室温が上昇します。冬には暖房が使えなくなる可能性があります。また、電動給水器などを使用している場合は、それらも使えなくなるかもしれません。

飲み水、ペットフード、キャリーケース、リードなどの避難用品に加えて、季節に応じた暑さ・寒さ対策も準備しておきましょう。

水槽の生き物への備え

水槽を設置している家庭では、停電によって、

  • フィルター
  • エアポンプ
  • ヒーター
  • 照明

などが止まる可能性があります。特に水温の変化は、生き物に大きな負担になることがあります。
「停電したら、この水槽はどうなる?」と一度考え、必要に応じて停電時に使用できる電池式の機器などを準備しておきましょう。

【まとめ】「何を買うか」だけでなく「何が使えなくなるか」を考える

停電への備えというと、懐中電灯やモバイルバッテリーなどの防災グッズを思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、それらを準備しておくことは大切です。

しかし、もう一歩進んだ防災としておすすめしたいのが、

「停電したら、自分の家では何が使えなくなるのか?」

を事前に確認しておくことです。

普段の生活を一つひとつ思い浮かべてみると、「ここも電気が必要だったのか」と気づくことがあります。

停電は、いつ起こるか分かりません。

だからこそ、特別なことをするのではなく、普段の生活を少し見直して、「電気がなくても最低限の生活を続けられる準備」をしておくことが大切です。

まずは今日、ご自宅を見渡してみてください。

「もし今、停電したら?」

そう考えることから、停電への備えを始めてみませんか?

防災士・金野さんのワンポイント

非常食や防災グッズを準備することはもちろん、実際に災害が起きたときに困らないためには、「自分の家では何が使えなくなるのか」を普段から考えておくことが大切です。まずは「もし今、停電したら?」と想像してみてください。そこから、ご家庭に必要な備えが見えてくるはずです。

執筆:Golden Field編集部
監修:金野 利哉(Golden Field株式会社 代表取締役/元救急救命士・防災士)

金野 利哉

Golden Field株式会社 代表取締役。 岩手県一関市出身。元救急救命士・防災士。 JICA海外協力隊としてフィリピンにて活動。